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ニュースの概要
2019年のノーベル化学賞を日本の吉野彰(よしのあきら),アメリカのジョン・グッドイナフ,イギリスのスタンリー・ウィッティンガムら3人に授与することを発表。3人はリチウムイオン電池の開発により,化石燃料を使わない社会を実現する可能性をもたらした。なお,グッドイナフ氏は97歳での受賞となり,過去最高齢のノーベル賞受賞者となる。
子どもと話すときのポイント
リチウムイオン電池が実用化され始めたのは1991年頃からなので,お子様が生まれたときには今ほど高性能ではありませんが既にリチウムイオン電池は誕生していたはずです。そのため,今の子ども達は大きくて重たいバッテリーを知らない子が多いのです。PHIでも鉛蓄電池を見せることがあるのですが,その重さと大きさに子ども達は驚きます。
また,その重さと大きさから解放されたことで,バッテリーは携帯やパソコンを始め,様々なものに使われるようになってきました。何に使われているか子ども達に考えさせるだけでも考える力を養えます。特にエネルギー問題として,太陽光発電は1955年には既に実用化されていて,その時に化石燃料から解放できる新技術ともてはやされたにも関わらず,現在の太陽光発電のように普及しなかった理由と照らし合わせて考えると中学受験,高校受験でも役立つ知識が得られます。
ここに載せていることを全て話す必要も覚える必要もありません。あくまで保護者のための予備知識です。へーと思える印象に残った部分だけ,自身の経験と合わせて話してあげて下さい。
リチウムイオン電池とは?
リチウムイオン電池とは,携帯電話やノートパソコンを始め,プリウスなどのハイブリッドカーのバッテリーに使われている電池で,小型なのに大容量,かつ劣化しにくいという特徴があります。そのため,現在ほとんどのバッテリーがリチウムイオン電池に置き換わり,エネルギーを蓄えることが日常化しています。
大容量のエネルギーを蓄えることができると,日中の発電を蓄えておいて夜使うことができ,少量の発電でも蓄えておくことができるため,規模が小さな発電を利用しやすくなりました。これにより蓄え辛かった電気を蓄えることができるようになり,充電が課題だった太陽光発電の普及も後押し。火力発電所での発電量を減少させることに貢献しました。また,ハイブリットカーの普及により燃費が格段に向上したため,化石燃料の使用量を減少させることに貢献しました。
過去にノーベル化学賞を受賞した日本人は?
- 福井謙一 : 1981年。フロンティア軌道理論。
- 白川英樹 : 2000年。導電性高分子(導電性ポリマー)の発見と開発。これが後のリチウムイオン電池の技術に応用されている。
- 野依良治 : 2001年。不斉触媒による水素化反応の研究。対称構造を持つ分子の構造。
- 田中耕一 : 2002年。生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発。レーザーによる分子の質量分析。
- 下村脩 : 2008年。緑色蛍光タンパク質の発見と開発。特定のタンパク質を光らせることができる技術。
- 根岸英一,鈴木章 : 2010年。有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング。ベンゼン環をつなぎ合わせる技術で新たな医薬品を作り出せた。
- 吉野彰 : 2019年。リチウムイオン二次電池の開発。
二次電池(バッテリー)の種類
ニカド電池(Ni-Cd電池)
1960年代に実用化された電池。丈夫で長時間の放置にも耐えられるため,現在もシェーバーやコードレス電話,非常用電灯などに使われている。
ニッケル水素電池(Ni-MH電池)
1990年代に実用化され,携帯電話やノートパソコン,デジカメなどに使われました。充電できる乾電池でお馴染みのエネループにも使われている。ニカドよりも大容量なため,ハイブリッドカーに搭載されたのもこのタイプが最初。長年使用していると容量が低下していくため,記憶にある人も多いでしょう。
リチウムイオン電池(Li-ion電池)
1991年に実用化され,従来の二次電池の弱点をほとんど克服していたため急速に普及。衝撃により破裂,発火の危険性があり,安全対策のために仕組みは複雑になった。電圧が高いため乾電池の置き換えには使われていない。
リチウムイオン電池は環境問題にも役立っている
二次電池(バッテリー)の役割は受験において割と重要な部分です。二次電池の仕組み自体は出てきませんが,それにより生活がどう変わったのか,どういうメリットがあるのか,どういうデメリットがあるのか。こだわる必要はないので,ぜひ何でも話してみましょう。社会的に大きな影響を与えた技術なので,割と身近なものにすぐに引っ掛かるはずです。
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