目次
受験にどう関わるのか
昨今、香港(ほんこん)を巡って米中の対立が深まっています。
この対立自体が入試に出ることはあまりありませんが、この対立の発端である中国共産党が出来たあたりは日本の歴史とも関わっています。
例えば、香港がイギリスに取られた背景は何戦争ですか?
そう、アヘン戦争に由来します。
そして香港の問題は東西冷戦にも通じており、さらに公民の単元の1つ、経済にも大きく関わってきます。
ファイでも香港について度々生徒から質問が出ますが、やはり教科書の歴史よりも身近で起きているところから入る方がイメージしやすく、歴史が苦手な子が、中華民国と中華人民共和国以降の歴史、戦後の日本との関わりについては理解を深めています。
孫文・毛沢東・袁世凱・蒋介石といったごちゃごちゃするあたりですね。
学校や塾では、中国史は日本史と絡む部分のみ抜粋して扱うのが普通で、全体像がつかみ切れないため、面白くもないし、訳が分からなくなるのです。
今身近で起きていることからでも十分受験に通用することが学べますので、中学受験・高校受験、どちらにせよ受験を考えるのであれば、話題にしておきたいところです。
実際にファイの子ども達の疑問に答えたものを書き下ろしているので、保護者の方が真似して話題にすることで、子ども達の興味を引き出していけるでしょう。
香港の概要(香港とは何なのか)
まず香港の位置を押さえておきましょう。
日本・台湾・南シナ海との位置関係を押さえておいて下さい。
日本が江戸時代の末期の頃、香港はイギリスの植民地になりました。イギリスはインド、マレーシア、オーストラリアも植民地にしていたので、南シナ海を押さえるのに香港の場所は都合がよかったのです。
その後イギリスは香港を中国へ返還したのですが、その時には既に香港がイギリスとしてイギリスのルールで発展していて、イギリスとの経済的なつながりもあったため、中国本土に取り込むのではなく、今の体制を維持することを条件に返還されました。これを一国二制度と言います。
ところが中国は返還されてわずか30年足らずでその約束を破ることを宣言してしまったのです。
それに怒ったのがアメリカのトランプ大統領。
「この件だけじゃない。中国は数々のルール違反を、平然とやっている。世界中が被害者だ」
と主張。
香港に関する特例を一切やめて、中国にも制裁をかけると宣言しました。
なぜ香港はイギリスの植民地になったの?
中国がまだ清という国だった頃、イギリスは清から茶葉や絹、陶磁器を大量に購入していました。
イギリスは紅茶の国と言われるくらいお茶が大好きで、当時も中国のお茶は高級品として嗜(たしな)まれていました。
これによりイギリスの金が大量に中国へ流れて貿易赤字になってしまったため、清から金を回収する方法を考えます。
そこでイギリスは植民地であるインドにアヘン(麻薬)を作らせて、それを中国(清)に売りさばくことを思いつきました。
茶を買って流出した金は、アヘンを売って回収すればいいと考えたのです。
これを三角貿易と言います。
しかしアヘンは麻薬。
清は怒り、イギリスと戦争になりました。
これがアヘン戦争です。
この戦争で、イギリスが勝利し、手に入れたのが香港でした。
なぜ返還されたの?
実はイギリス統治時代の後、第二次世界大戦時に日本が香港を占領します。
その数年後には日本が敗戦し、香港は手放すことになりました。
その時にイギリスへ戻ったのですが、中国が国際連合で常任理事国(ポツダム宣言に名前を連ねただけだけど一応戦勝国扱い)となったことで、イギリスに「対等な立場となったのだから返還してくれ」と要求。
そのためイギリスはその要求に条件付きで応じることにし、1997年に返還されました。
その時に作られた香港特別行政区基本法には「国際関係及び軍事防御以外の全ての事柄において高度な自治権を有すること」とあります。
つまり中国としての他国とのやり取りや軍事に関連すること以外は、香港に任せるよ、という約束で返還されたのです。
なぜ中国は約束を破ったの?
ここでポイントとなるのは、中国は約束を破ったとは思っていないということです。
これはどこの国との関係においても言えることですが、「解釈の違い」というやつです。
つまり、中国は「香港でデモが起きてて行政が崩壊しているから、立て直すためにやるんだよ。自治権を奪っているわけじゃないよ。」と言っているのです。
例えるなら、二世帯住宅(入口が2つあって中で分かれてる家)に住んでいる遠い親戚に対して、
「同じ家だけど、それぞれ生活しよう」
と言って招き入れておきながら、
「同じ家なんだから、同じルールを守れよ」
と強要し、反発されたので
「同じ家なのに意見が違うなんて家庭崩壊の危機だ!何かあると危ないから、そっちの部屋に泊まり込んで見張っておくね!」
という感じ。
外から見れば理不尽に聞こえるかも知れませんが、それは日本が民主主義だから。
社会主義の彼らからしてみれば、それが普通なのです。
国が違えばルールも違う。
解釈も違う。
だから中国共産党が間違っているとも約束を破ったとも言えないのです。
そもそも彼らは民主主義ではないのですから。
なぜデモが起きているの?
香港は中国本土とは独立して高度な自治が認められています。
そのため、中国本土にはある法律が香港の法律にはありません。
その1つが中国共産党を批判する人の取り締まり。
本土では中国共産党を公然と批判すると、逮捕されます。
そしてインターネットやメディアも厳しく検閲されているため、そういった発言はすぐに閲覧できなくなるだけでなく、中国共産党にとって不都合な歴史を外に出すことは一切許されず、なかったことにして教科書からも抹消、表に出そうとした人物は弾圧されています。
しかし香港の法律ではそれを取り締まれないため、香港には中国共産党の非難をする人が本土から逃げてきているのです。
当然中国共産党はそれを良く思っていない。
だから「逃亡犯条例」という法律を香港で成立させようとしました。
これは中国本土で指名手配された人物は、香港にいても逮捕できるという法律です。
そのため香港では反発が起きたのです。
そしてそのデモを鎮圧するために、とうとう中国共産党が香港国家安全法という法律を制定させる方針を打ち出しました。
この法律はもはや逃亡犯だけではなく、香港市民全員を対象としたもので、一切の言論の自由を許さない宣言でもあるわけです。
なぜアメリカは怒ったの?
アメリカは香港に対して関税や渡航の優遇措置を与えてきました。
これは香港が中国の一部でありながら中国の社会主義に縛られない場所だったからです。
それが今回の件で香港も中国に縛られることになりそうなため、見直すことを表明しました。
また、この件だけではなく、中国共産党は南シナ海の軍事拠点化にしろ尖閣諸島の件にしろ、マイルール・マイ解釈を表明して国際ルールを無視していました。国際裁判所の判決にすら従わない始末ですからね。
そして貿易に関しても他国の会社の工場を中国国内に作らせて技術力を盗み、パクリ商品を政府公認で出回らせる始末。
ファーウェイは名指しで批判され、制裁の対象になったのは記憶に新しいでしょう。
そこへ来て新型コロナの隠蔽をWHOが手助けした疑惑が上がり、国際組織ですら中国が不当に牛耳っている現実が浮き彫りになりました。
これらの被害を被っているのはアメリカだけではなく、ヨーロッパや一対一路構想の周辺国も同じような被害を受けているため、世界各国で中国批判が起きています。
トランプ大統領の発言が過激で注目を浴びているに過ぎず、他の国も中国から距離をおく国が出てくる様子です。
ちなみに日本は何も表明していません。
どちらにもつかず、静観しています。
日本も中国と変わらないような政治腐敗が起きているので、やぶへびになるから言えないという説もありますが…
雨傘運動ってなに?
2014年に学生が起こした香港反政府デモのことを雨傘運動と言います。
香港の高度な自治は約束されているとはいえ、実は選挙に出られるのは中国共産党が推薦した人物のみという、実質傀儡(かいらい)政権だということに反発して起こりました。
このデモの時に警察隊は催涙スプレーを使い、デモ隊はそれを防ぐために傘をさして、道が雨傘で埋め尽くされたことから雨傘運動という名前が付きました。
最終的にはこのデモのリーダーを逮捕し、武力を持って鎮圧したことから、第二の天安門事件だとしてさらに反発が強くなり、現在に至っています。
「集まれ動物の森」が中国で大人気?
新型コロナウイルスの影響で外出自粛となり、家でコミュニケーションが取れる「集まれ動物の森」、通称「あつ森」が中国で人気になっています。
このゲームは自分の仮想世界を持つことができ、インターネットでつながった別のユーザーとコミュニケーションを取ることもできます。
ネットでコミュニケーションを取れるゲームなら他にもいくらでもありますが、過激な演出が多いものが多く、その点集まれ動物の森は平和的で、男女問わない点も人気の理由になっています。
ところが集まれ動物の森の中の仮想現実を使い、中国政府を批判できることに気付いた人がそれを使い、ネットの中で仲間を集め、民主化運動にまで発展しました。
それが雨傘運動のメンバーの1人。
そこから中国共産党はそのサーバーにつながらないようにし、Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)も販売禁止にしていきました。
そのため現在は合法的なルートでは出回っていないようですが、こっそり政府の批判をできる場所を求める人が後を絶たないそうです。
集まれ動物の森は知っている子どもも多いため、この話はみんな食いつきました。
たったこれだけでも中国共産党がどんな政治をしているのかが垣間見えます。
香港問題は難しい?
日本のことではないので確かに難しいと言えば難しいでしょう。
特に歴史を何も知らない子にとっては、日本との関連も見えないため、何も楽しくないでしょう。
しかし香港は日本人も多くの企業が進出していることから、決して他人事ではなく、最近はニュースでも頻繁に目にするため、馴染みやすいネタになってきています。
中国では過去に天安門事件という政府による武力鎮圧が起きており、それを隠蔽した過去があります。
おそらく今回の問題もなかったことにされるでしょう。
しかしそういったことに子どもは興味を持つものです。
そして一度興味を持てば、今何が起きているのかが気になります。
すると自然にニュースから学校のテストや入試程度の知識はカバーできるようになってしまうのです。
今回ここで紹介した話は、実際にファイの子ども達が疑問に思い、聞いてきたことです。
難しい話ですが、興味を持っている子は理解できてしまいます。
実際ここから教科書程度のことは学んでしまい、他に特に勉強していなくても、社会の点が取れるようになってしまった子は何人もいます。
親が分からなくても、興味を持つきっかけさえ与えられれば子どもは勝手に勉強するのです。
今の受験勉強に限界を感じているのなら、ファイの勉強法に変えてみませんか?
いつまでも同じ手法で引っ張り続けても、何も変わらないまま受験に突入してしまいませんか?
コメントを残す