守護と地頭の役割
暗記させられる守護・地頭
教科書では「守護と地頭が設置されました。」とセットで書かれて、そのまま暗記させられる「守護」と「地頭」。
これで納得して覚えられるのなら問題ない気もしますが、中学受験の難関校では「守護と地頭の役割の違いを理解しているか」が求められます。
高校受験では公立高校であっても違いは知っておいた方がいいでしょう。
中学の教科書には一応一言だけ説明が載っていますからね。
今回はそんな質問から始まった塾生の授業を、親が教えるときのポイントと共に紹介しましょう。
ファイの授業で扱った守護と地頭の理解度がわかる問題が開成中で出題されました!
日本最難関中学である開成中の問題は、一見すると「こんな知識まで要求するの!?」というような問題ですが、ちゃんと本質を理解していれば答えられる問題が結構多いのです。
「守護」を教えるポイント
守護というのは、元々は天皇が地方の反乱を抑え込むために、地方の豪族に任命したのが始まり。
教科書には出てきませんが、これを追捕使(ついぶし)と言います。
この追捕使として有名なのは、承平天慶の乱(じょうへいてんぎょうのらん)の1つ、藤原純友の乱の鎮圧で追捕使として任命された小野好古(おののよしふる)でしょう。
平将門の乱と同時期に瀬戸内海で起こった反乱ですね。
この乱自体も難関を目指すなら必須。
このように地方で起きた反乱に対して任命し、鎮圧や討伐をまかせたのが追捕使で、守護の原型です。
「あれ?でも守護って幕府の直轄じゃなかった?天皇が命令を出していたの?」
その通り!
教科書に出てくる守護は幕府直轄となっています。
この追捕使のシステムを幕府直轄としたのが源頼朝。
ここで考えさせてみましょう。
源頼朝は誰かを狙っていましたよね?
「あー平家を滅亡させるのに使ったの?」
この話をすると、この子のように平家滅亡が先に出てきますが、それでも問題ありません。
平家滅亡は山口県の壇ノ浦。
それを源頼朝に命じたのは天皇で、実行したのは源義経。
そしてこの時代、福岡の大宰府から京都までは、割としっかり天皇制が浸透していました。
天皇制の勢力が未だ不安定だったところと言えば…
そう、東北、蝦夷地です。
だから天皇は征夷大将軍という職を任命して東北への権力拡大に力を入れていたんですね。
そして源頼朝がその東北を討伐する理由といえば…
「源義経の討伐!」
大体ここまでくるとつながってきますので、このように子どもも予想がついてきます。
つまり、源頼朝が、身を潜めていた義経の討伐を理由に守護を置く許可を得て、軍事の実権を握ったんですね。
これが1185年の話。
鎌倉幕府成立が1192年ではなく、1185年となった理由でもあります。
1192年に征夷大将軍に任命されたときには既に実権を握っていたんですね。
源頼朝が、東北地方に隠れていた義経討伐を理由に守護を置く許可を得たのが、幕府の直轄となった始まり。
以後、各地の反乱を鎮めるために駆り出される軍隊としての役割を担った。
「地頭」を教えるポイント
地頭も鎌倉幕府が設置していたものですが、守護とは役割が大きく異なります。
地頭はその名の通り、その地の頭(かしら)。
その地というのは荘園、公領です。
つまり、荘園や公領の税の徴収を担当すると共に、その地を外部の侵略から守り、治安を維持する、いわゆる自衛隊や警察的な役割をしていたのです。
外へ出て討伐へ向かう守護とは異なり、地頭はその土地から出ないのが大きな違いですね。
よって幕府は地頭を設置することで、その地域からの税収を確保し、さらに安定もはかれたというわけです。
荘園や公領を、侵略から守り、税を徴収する警察兼税務官的な役割。
決められた土地を守るので、外へ戦いに行かない。
開成を目指すなら
開成中で出題された問題
開成中で出題された問題を紹介しましょう。
対象は鎌倉時代から源頼朝が死ぬまでの間を知っている子です。
小学校で歴史を習うのは、学習指導要領通りなら小6から。
中学受験では小5の秋から習うことが多いでしょう。
ファイでは小4でも教えてしまいますが(笑)
割と深く学んでいなければ答えられませんので、この問題をきっかけに考え方を広げていければ十分でしょう。
問題
ア
解説のポイント
「鎌倉幕府をつくりあげていく過程」の集大成が征夷大将軍ですから、cは最後とわかります。
そして先程話した通り、守護は討伐のために設置されたものですから、その由来と役割を知っていれば、a → bということもわかります。
簡単ですね(笑)
とはいえ、実際にはこれを「知っていなければいけない」と思っている人が多くいます。
実際大手の塾の先生も「こんなところまで知っていないといけないのか。」と言っていましたが、そうではないんですね。
これは単純に守護の役割を正確に理解していれば解ける問題です。
何でもかんでも暗記しなくても解けてしまいます。
開成に行く子なら趣味の世界で既に知っている子も結構いますが、普通の子がこのような問題を出題する難関校に合格しようと思ったら、丸暗記では限界が来ます。
知識という意味では、塾の先生だって知らないような問題が出るのですから。
時間はかかりますが、一つずつ、正確に理解していくことを心がければ、このような問題も解くことができるようになってきます。
ぜひお子様と一緒に楽しみながら勉強して下さい。
どうしてもうまく教えられない、喧嘩してしまうのなら、ファイへご連絡下さい。
開成はもちろん、難関を目指す子の親へ、アプローチの仕方をアドバイスしていますよ(^^)/
「先生、守護と地頭ってセットで覚えているけど、どっちが何やったかよくわかりません。何かいい覚え方ないですか?」