目次
はじめに
できます。
正確には、中学受験の問題の本質に関わる部分を考えるきっかけになる、といったところです。
なので、映画やドラマを見たから成績が上がるわけでも、合格できるわけでもありません。
例えば、難関中に出題される国語の題材の傾向として、生命に関するテーマが多いという特徴があります。
また、中高一貫の適性検査では、社会問題に関するテーマが多く取り上げられています。
それらは日々読書をしている子なら大した問題ではないでしょう。
しかし、現実問題として、中学受験の塾に通っていて、読書の時間もしっかり取れている子はごくわずかです。
それでも点を取れてしまう子は、一体どこから学んでいるのでしょうか。
その一つが、親子の会話なのです。
つまり、日々の親子の会話で中学受験に通じるテーマについて話している子は、入試問題を受け入れやすくなるため、読書量が少なくてもカバーできてしまうのです。
この映画・ドラマ紹介では、そういったテーマに触れやすいものを紹介しておきます。
なお、ファイは受験勉強なんてさせるものじゃない、と考えている塾です。
よって選定基準は、親子で話して欲しい『社会人としての考え方』が含まれているかどうか、に寄せています。
受験のためとして見るのではなく、人として成長する上で考えて欲しいことを話すきっかけにして頂けると幸いです。
禁止事項
親子で話題にすることを前提としています。
勉強の一環として子どもだけに見せるようなことはしないで下さい。
映画やドラマがつまらないものになってしまいます。
以下は選定基準と目的についてです。
ファイのオンライン授業では、勉強しろとは言わず、子どもが興味を持ったものから学ぶことを推奨しています。
その観点から、中学受験に通じる映画を選別しました。
選定基準は以下の通りです。
- 考えさせられるもの
- 極力事実や社会問題に通じる題材に基づいているもの
※事実や社会問題を題材にしているフィクションやSFを含んでいます。 - 子どもだけでは難しい社会問題を含んだもの
- 頭脳戦が繰り広げられるもの
戦略やピンチの時の思考も含んでいます。 - オンライン授業の塾生が興味を持ったもの
実際に塾生が話題にしていたものから、どのように話が膨らませていくことができたのかを参考にしてレビューを書いています。
目的は、大人度を上げることにあります。
中学受験のテーマを一言でいうなら、大人度の高さですからね。
そのため、子どもだけでは難しい題材が並んでいます。
つまり、親子で見ることを前提としている、ということです。
これらの作品は、親子で見ることにより、子どもの疑問や感想に、すぐさまフィードバックを返してあげることができます。
こうして大人の考え方を学んでいくのです。
その学びの中には、「わからなければ調べる」という姿勢も含まれます。
親がわからなくても心配しないで下さい。
一緒に調べればいいのです。
こうして一つの映画の理解を親子で深めていくことで、子どもは中学受験に通じる考え方を身に着けていくことができます。
なお、選定にはオンライン授業の塾生がどれくらい興味を持ったか、も参考にしています。
ファイではお子様の興味の方向性を分析し、どのような題材、どのような考え方から学ぶと勉強しやすいかを調べています。
それらを基にして、実際に効果があったものを載せていますが、真似して同じようにいくとは限りません。
うまくお子様を持っていけないようでしたら、ファイへご相談下さい。
使い方
難しい社会問題を含んでいるため、子どもには刺激が強すぎる場合があります。
基本的には中学生までが見られるG、PG-12、R13+を紹介していますが、対象年齢レーティングと内容は、各自確認し判断して下さい。
また、つまらない映画を無理に見る必要はありません。
好みもありますから、つまらなければ迷わず中断するようにして下さい。
基本的には親が楽しんでいるものは、子どもも興味を示すものなので、無理せず一緒に楽しめるようにしましょう。
最後に、これはぜひやって頂きたいことをひとつお話します。
映画は途中で何度でも一時停止をしても構わないので、状況確認や知識不足は、調べたり話したりしながら、話題を共有していってください。
これが映画で大人度を上げるポイントになります。
もちろんそんな必要もなく、一気に見入ってしまえるならそれでも構いません。
とにかく話題を共有して楽しむ。
受験や合格なんて忘れて、純粋に楽しんで下さい。
ノンフィクション・実話を基にしたストーリー
ハドソン川の奇跡
離陸直後にエンジンが停止してしまった旅客機を、極寒のハドソン川に不時着させ、一人の死者も出さなかったパイロットの話です。
なお、この事故は2009年に起きたUSエアウェイズ1549便不時着水事故で実際に起きた出来事を元に描かれています。
離陸からわずか5分の出来事で、本当に乗客を危険にさらしてまで水上着陸しなければならなかったのか、引き返すことができたのではないか、という論争が繰り広げられます。
この論争の裏には、どこが責任を被るかという駆け引きがあります。
事故なら保険会社が莫大な費用を支払わなければなりませんが、故意なら払う必要がなくなります。
また、機体に問題があったのなら、製造会社や整備会社にも影響が出てきます。
もしパイロットのミスということになれば、それらの責任は全てパイロットに押し付けて、なかったことにできます。
この駆け引きや、どうやって自分や家族を守るために論破していくのか、が描かれています。
暴力や暴言、無口で対抗する子どもに、冷静に言論で立ち向かう姿はかっこよく映るはずです。
で、勉強は身を守る手段になることを教えてあげて下さい(笑)
スポットライト 世紀のスクープ
カトリック教会の司教による性的虐待を明るみにした新聞記者の実話です。
聖職者による性的虐待は、未だに発生していますが、この新聞社がスキャンダルを報じるまでは、一部が問題になるだけで、明るみにもなっていませんでした。
それが全米中で問題となり、発覚しただけでも約50年間で一万件を超えていた言います。
こんな事件が問題にならなかった背景には、カトリック教会による権力と、聖職者による信者の洗脳があります。
「バツを受けなければならない」とか「身を清めなければならない」とか、信じ込んでしまっていたので、被害者だという認識すらなかったのです。
親子関係にも通じてくるものがありそうな気もしますが…
そして、声を上げても、権力と信頼により握りつぶされていた現実も。
記者の役割、宗教と権力の怖さ、誰かが声を上げないと世の中が変わらないこと、などを学べます。
マネーボール
クール・ランニング
タイタンズを忘れない
ライオン
最強のふたり
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
グレイテスト・ショーマン
歴史を史実に基づいた映画から学びたい方は、こちらの記事を参考にして下さい。
医療・介護
博士と彼女のセオリー
- 介護と愛
- 障碍者
実在したスティーブン・ホーキング博士をモデルとした映画です。
彼は21歳で難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され、余命2年を宣告されるものの、76歳まで生きた理論物理学者です。
その闘病生活と、妻による介護の難しさがテーマになっています。
なお、これは映画なので、事実に基づいているとはいえ、脚色はあるでしょう。
でも現実はどうだったかはテーマに関係ありませんので、細かいことは気にせず、家族による介護の大変さについて話せればいいでしょう。
パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー
- 笑いと医療
- 社会福祉
実在するアメリカの医師、パッチ・アダムスをモデルとした、事実に基づく伝記映画です。笑いこそ最良の薬と考え、自らが道化師となってそれを実践してきました。
古い映画ですが、ファイは医師を始め、保護者が医療系の方が多いためか、割と知っている子が多いようでした。医療の道を志す方は、機会があれば触れてみるといいでしょう。
子どもの才能と、道を究めた者のストーリー
天皇の料理番
- ダメダメな少年が、料理にハマり、宮内庁の料理長にまで上り詰める話。
- おもてなしの極み
- 努力とは何か
- 家族の支え
幼い頃は素行が悪く、修行に入った寺からも追い出されていた少年が、26歳にして宮内庁の料理長を任されるまでに成長した秋山徳蔵をモデルとした話。
「幼い頃は素行が悪く、修行に入った寺からも追い出されていた少年が、26歳にして宮内庁の料理長を任されるまでに成長した秋山徳蔵をモデルとした話です。細部、特に恋愛に関する話はほとんど創作であるものの、経歴や時代の流れ、喧嘩や騒動については、ほぼ事実に基づいています。特に興味深いのは、興味を持ったものに対する執着心で、いじめられても殴られても、料理に対する知識を得られることの方が嬉しかった、と自書で語っており、この辺りの熱意や雰囲気はドラマでも感じ取れるでしょう。
なお、ドラマでは父親とはうまくいかず、兄がよき理解者として登場していますが、実際は親が料理屋だったことから、親自身も料理に関しての理解は深く、秋山徳蔵への理解を示していたと考えられます。ただし、料理人や日本人に対するイメージが悪かったのは事実なので、世間の風当たりは実際にドラマで描かれていたような感じだったようで、決して親の七光りで努力なくして上り詰めたわけではありません。むしろ自書で描かれている事実の方が酷いような…
現実には裕福な家庭だったとはいえ、秋山徳蔵は決して料理人としての英才教育を受けてきたわけではありません。その道を自身で究めることを望み、家族も理解し、応援してきたから成し得たものです。時代が明治から昭和にかけてということもあり、スポコン根性的な部分も多く見られますが、秋山徳蔵がそれをどう捉え、どう乗り越えていったかは現代でも通用する考え方でしょう。子どもの教育に疲れを感じている方は、秋山徳蔵及びその家族の生き様を見てみると、子育ての幅が広がるのではないでしょうか。そしてぜひ秋山徳蔵のカッコいいと思う部分を、子どもに語ってあげて下さい。『努力しろ』と具体性も何もない声かけをするよりも、はるかに効果的な声かけになるでしょう。」
武士道・カッコいい生き方・頑張ってみようかなと思えるストーリー
ラストサムライ
- 欧米人からみた武士道
この話は完全なるフィクションで、登場人物も実在しませんが、時代背景としては、明治初期の西南戦争をモデルにしていると考えられています。
注目すべきは欧米から見た「武士道」のイメージです。「武士道」は新渡戸稲造の著書により世界的反響を呼びました。サムライに対して欧米ではどのようなイメージを持っていたのか、第二次世界大戦において、なぜ日本の特攻が恐れられたのかがイメージしやすくなるでしょう。
タイタニック
- 様々な愛の形
- 傲慢さが生んだ悲劇
物語自体はフィクションですが、実在のタイタニック号沈没事件とその生存者の話に基づいて脚色したストーリーです。
この映画は、映画で完結するのではなく、タイタニック号に興味を持ってもらい、自身で調べたり、毎年どこかしらのタイミングで目にするドキュメンタリーに興味を持ったりして、知見を広げていきやすい題材になります。
最後まで自身の救助より他者の救助を優先し、避難誘導を手伝った一等客室の乗客、避難後の食糧の確保と沈没直前まで避難し損ねた人を探して誘導したパン職人、船に残り、死の直前まで音楽を奏でた演奏家、一緒に死ぬことを覚悟し、船内に残った新婚夫婦、会社の名誉と宣伝のために無理を強いた社長、沈まない船という名声に驕り、適切な救命ボートの数を用意せず、避難訓練もろくに行っていなかった船長と乗組員たち、自然発火する可能性の高い乾燥石炭をそのまま燃料として積み込んでいた機関士たち、タイタニック号からの救難信号を冗談だと思って救助に向かわなかった周辺の船舶たち、念のため救助に向かって多くの命を助けることになったカルパチア号の船長。
このように話題を広げることで、映画では描かれなかった多くの人々の生きざまや考え方に触れることができ、考えるきっかけを得ることができます。
なお、タイタニック号の沈没場所をよく聞かれるので、世界地理:重要地点マップに載せてあります。
ペイ・フォワード
「もし自分の手で世界を変えたいと思ったら、何をする?」
という中学1年生の社会の先生の課題に対し、主人公は自分が受けた善意をバトンするという方法を思いつきました。
そして実際に実行に移してみます。
彼自身は失敗に終わったと思った計画でしたが…
というストーリーです。
今ではSNS等で小中学生でも発信できる時代ですが、まだスマホもない時代の話ですからね。
アイデア次第で世界を変えられる気がしてくる映画です。
ちなみにこれ、ハッピーエンドではありません。
奇跡のリンゴ
アポロ13
劔岳 点の記
はやぶさ/HAYABUSA
ソーシャル・ネットワーク
マイ・インターン
舟を編む
知略・戦略
ライアーゲーム
- ピンチからの逆転
- ルールの解釈
- 心理戦
すぐに「無理」っていう子、「ルールは絶対だ」と信じている子にオススメなのが、このライアーゲームです。
タイトルそのままの嘘つきゲームで、自分が勝つために、ルールに書いてないグレーゾーンを駆使して逆転していきます。
ピンチから逆転する瞬間は、スカッとします。
この主人公に感化された子の中には、「自分も知性で勝てる人間になりたい!」と思って勉強するようになる子もいます。
デスノート
- ピンチからの逆転
- ルールの解釈
- 心理戦
ライアーゲーム同様に、すぐに「無理」っていう子、「ルールは絶対だ」と信じている子にオススメです。
名前を書くと殺せる死神のノートを手にした人と、その殺人鬼を捕まえようとする探偵の知的な攻防戦が描かれています。
こちらもルールの解釈と、心理戦が要となっています。
そして何より面白いのは、コミックと映画とアニメではストーリーが異なっている点です。
映画化するとストーリーが変わってしまうのはよくある話ですが、視点を変えて、結末まで変えてしまうのはデスノートならではと言えるでしょう。
戦争・社会問題
- 戦争がなぜ起きるのか
- 正義とは何か
描写が残虐で生々しいため、子どもに一人で見させることはオススメしません。そもそもレーティングがR15+なので、年齢制限に従っていれば知ることもないはずなのですが^^;でも見てしまう子は見てしまうので紹介しておきます。
まず残虐な描写についてですが、この描写があるからこそ、戦争の残虐性が伝わりやすいのでしょう。また、進撃の巨人の凄いところは、脇役のように思える登場人物一人一人にストーリーが存在し、それぞれの正義や恨みについて描かれている点です。これにより、なぜ争いが起こるのか、どうして戦争にまで発展するのか、を疑似的に知ることができます。
また、親近感が湧いた登場人物が、端から死んでしまう点も、戦争では、いつ誰が死んでもおかしくないことを表す描写になっていると言えるでしょう。そのため、非常に長いストーリーになっており、登場人物も多く、全て見ないと複線回収ができません。よって、見るなら最後まで見るつもりで時間を確保した方がいいでしょう。流し見や中途半端なところで終わると、理解が追い付きません。また、たとえ15歳を超えていたとしても、見るなら親子で見て、考え方を話すきっかけにして欲しい作品です。
帰ってきたヒトラー
第二次世界大戦時におけるナチスドイツのアドルフ・ヒトラーが現代にタイムスリップしてきたら…という設定のコメディー。
当然実話ではありませんが、ヒトラーのコスプレをした俳優が、街灯でインタビューしていくシーンやテレビ局でのシーンは一部やらせなしの本物で、実際何かあった時のために護衛をつけて撮影をしていたそうですが、比較的ネタとしてウケていたとのこと。
つまり、あの戦争での出来事を笑える世代が出てきているということです。
ヒトラーの演説手法や大衆の心をつかむ手法は役者も真似しているといい、ヒトラーがどのように人々を扇動していったかが生々しく感じられるでしょう。
ゴジラ
見せるべき子を選ぶ作品
フューリー
レーティングはGとなっていますが、死体や死亡シーンが生々しく描かれているため、小学生、中学生には刺激が強い可能性があります。
第二次世界大戦中の敗戦直前のドイツでの戦争がテーマ。
ストーリー自体はフィクションですが、戦時中の状況には実話を取り込んでいるため、戦争の悲惨さは感じることができるでしょう。
戦争で人を殺すことにためらいが無くなった兵士の中に放り込まれた、人を殺したことがない兵士(本来はタイピスト)の苦悩が描かれています。
当時の戦車での戦い方はあまり見る機会がないため、戦車が好きな子は興味を持つかも知れませんが、善悪の良識がない子には見せるべきではありません。
ヒトラー~最後の12日間~
ヒトラーが最後どのように死んでいったのか、が描かれています。
ヒトラー直属のタイピストが見て来たものを映画化したとのことなので、実話に近いものとなっています。
ドイツがどのような戦争をしてきたのかを知らないと難しくて楽しめないでしょう。
まずドイツがどのような戦争をして、どのように衰退していったのか、そしてどのように降伏したのかを学び、それから見ると深みが増すと思います。
「映画で中学受験の勉強なんてできるんですか?」