目次
効果的な伴走をするための方法
伴走に疲れたらどうすればいい?
サピックスや早稲田アカデミーに通う方からの、こういった「伴走に疲れた」というご相談が多くなってきました。
そこで今回は、中学受験における「伴走」についてお話ししたいと思います。
中学受験では親が子どもと一緒に伴走してサポートすることが求められます。
特に開成合格者数日本一で有名なサピックスという塾では、親が何をすべきか具体的に指示しています。
体育会系で有名な早稲田アカデミーでは、伴走は不要と言われるものの、現実的には親の伴走なしではやっていけない状況に直面します。
中学受験において親の伴走は必須とされていますが、実際にはどうやって伴走すればよいのでしょうか?
巷には中学受験の成功談があふれていますが、それを真似してもうまくいかないことが多いのです。
そのため、「伴走に疲れた」「子どもが何を考えているのかわからない」という相談が多く寄せられています。
そこでここでは、伴走の目的とその方法についてお話ししたいと思います。
中学受験に必要とされる主な伴走
まず、主な伴走の種類について振り返ってみましょう。
伴走の形は家庭によって様々ですが、大まかに以下のようなものがあります。
- スケジュール管理:何をいつやるかを計画する。
- 勉強を促す:声かけをして、計画を実行させる。
- 丸つけ:親が子どもの宿題やテストの丸つけを行う。
- 親塾:子どもがわからないところを、親が教える。
- テストの分析:返ってきたテストを分析し、どこが理解できていないかを把握する。
これらの伴走は親の大きな負担になることが多いものです。
伴走の目的と失敗する要因
伴走の目的について聞くと、多くの親御さんは「合格するため」と答えます。
しかし、子どもの意識と親の意識がずれていると、伴走がうまくいかないことがあります。
親は合格を目指していますが、子どもはその価値を理解していないことが多いのです。
このズレが原因で、伴走が空回りしてしまうことがあります。
では、何のために伴走するべきなのでしょうか?
受験に合格することも大切ですが、それだけでは不十分です。
例えば、受験に合格した後、子どもが自分で勉強を続けられるかどうかを考える必要があります。
受験に合格するためだけの伴走では、受験後に子どもが何をすればよいのかわからなくなってしまうからです。
成功する伴走の特徴
成功する伴走のためには、子どもがどんな大人になってほしいかという将来像を具体的に描くことが重要です。
例えば、「いい中学、いい高校、いい大学に行って、いい会社に勤める」といった目標を持つことも一つの方法ですが、それだけではありません。
子どもが自分の好きなことを見つけ、目標を達成できるようにサポートすることが大切です。
将来像を具体的に描くことで、今行っている伴走がどのような力を子どもに身につけさせるのかを考え、一貫性を持たせることができます。
具体的な例を挙げると、子どもが好きな科目や興味を持っている分野に対してどのようにサポートするか、それが受験にどう結びつくのかを考えることが重要です。
次に、伴走に関する具体的な事例を交えながら、成功するためのヒントをお伝えします。
伴走の失敗から逆転した実例紹介
今回は、伴走がうまくいかなくなったケースから逆転した実例をご紹介します。
これを読むことで、同じような状況にある方も参考になるのではないでしょうか。
失敗の始まり
この家庭では、子どもが小さい頃から受験を意識して育てていました。
親は「スケジュール管理」「丸つけ」「わからないところを教える」「テストの分析」といった一般的な伴走を徹底的に行っていました。
ところが、次第に子どもがスケジュール通りにできなくなり、親子の関係が悪化していきました。
最初の頃は、小学3年生で塾のトップ10に入るほどの成績を誇っていました。
しかし、小学4年生になると、校内でトップ10に入る程度の成績に落ち、さらにその後は成績がどんどん下がっていきました。
半年ほどで成績が急降下し、親子ともに疲弊してしまいました。
問い合わせを頂いたのはこの頃です。
スケジュール管理の問題
親が作ったスケジュールは、「ノルマ」として管理されていました。
「今日のノルマ」「何時までに終わらせる」「何時にこれをやる」
といった細かい指示が書かれていました。
親は子どもの一日のスケジュールを全て管理し、夜寝る前に復習させるなど、徹底的に監督していました。
これの一体何が問題だったのでしょうか。
その問題点について、順番にお話ししていきます。
失敗からの逆転
その後、親子は私のところに相談に来ました。
お母さんに「何のために伴走しているのか」と尋ねると、多くの親御さんと同じように「合格してもらいたい」「自分がやりたいことを達成してもらいたい」と答えました。
そこでさらに突っ込んで、子どもにやりたいことは何かを聞いてみました。
すると
「病気を治す研究がしたい。」
というのです。
そこでお母さんに、研究者になる夢を応援したい、ということで間違いはないかどうか、確認しました。
するとお母さんは、「もちろん、応援するつもりです。」と答えました。
しかしここで冷静に考えて頂きたいのです。
今のノルマ制で勉強をこなすこと、時間通り勉強し、計画通り遂行していくことが、果たして研究者になる素地を育てていると言えるでしょうか?
細々した作業的なノルマが与えられ、ルーティーンワークをこなし、わからないところは親に聞く研究者がいるでしょうか?
そんな研究者はいませんよね?
そこで、このままでは伴走がうまくいかないことを説明しました。
子どもが目指す将来と伴走のギャップ
この子は将来病気を治す研究者になりたいと言っていました。
しかし、親が行っていた伴走は、研究者に必要なスキルを育てるものではありませんでした。
研究者として成功するためには、自己管理能力や自発的な探求心が重要ですが、親は「ノルマを達成する」ことを重視しすぎていました。
このような方法は、営業職やスポーツ選手には適しているかもしれませんが、研究者を目指す子どもには適していません。
研究者になるのを応援するのであれば、研究者としての素地を育てる伴走でないと、うまくいかないのです。
実際この子は、自分で考えて行動する力や、わからないことを解決する力は失われており、とても研究者向きの思考ができているとは言えませんでした。
そのためこの子は、親の伴走と将来の夢との間にギャップを感じ、学習意欲を失っていってしまったのです。
伴走方法の見直しと結果
まず子どもの将来を支援するために、現在の伴走方法を見直すことにしました。
具体的には、以下のような変更を行いました:
- ノルマ管理の廃止:時間単位での細かいスケジュール管理やノルマの設定をやめました。
- 自主性の尊重:子どもが自分で考え、自分のペースで学習することを尊重しました。
- サポート役に徹する:親は教える役から、子どもが考えるためのサポート役に徹しました。
これにより、子どもは自分で考えて行動する力を徐々に身につけていきました。
合格は重要ですが、それ以上に「子どもが将来どのような大人になってほしいのか」という具体的なビジョンを持つことが大切です。
そのため、合格することや、成績を上げることへの執着もやめて頂きました。
そして親が子どもに期待する将来像を具体的に描き、それに基づいて伴走の方法を見直すことにしました。
このビジョンがハッキリしてくると、親が教えてしまうことがいかに矛盾しているかがわかってきました。
わからないこと、誰も解決していないことを解決するのが、研究者の役割ですからね。
なので、わかるまで、納得がいくまでじっくり考えてもらい、塾のカリキュラムも無視して取り組みました。
計画も親が立てるのではなく、解けるようにしたいものを中心に、子どもに考えてもらいました。
この計画は、全く緻密ではありませんでしたが、、この子にとってはこれで十分だったのです。
親は計画の遂行を喜ぶのではなく、自ら解決したことを喜び、サポートしていきました。、
結果とこの事例からわかること
これらの改善を経て、子どもの成績は徐々に回復し、再び上昇傾向に転じました。
と言えるとカッコいいのですが、現実は算数と理科のみが突出した、かなりでこぼこな成績でした。
一応本人も気にしていたため、最低限の勉強はしていましたが、成績を上げる努力はしていません。
しかし結果的に、理系の難関中学に合格することができました。
もちろん国語と社会はでこぼこのままです。
しかし研究者は特化したものを研究するものであり、満遍なく研究している研究者などいません。
つまり、将来像のあるべきところに落ち着いた、ということです。
この事例から、伴走の目的を再確認し、子どもの自主性を尊重することの重要性がお分かりになると思います。
中学受験は親子ともに大きな挑戦ですが、伴走の方法を見直し、子どもが自分で考え行動できるようにサポートすることで、成功への道が開けます。
まとめ
このケースは、子どもの将来の目標に合わせた伴走方法の重要性を示しています。
親が行う伴走が子どもの目指す未来と一致していることが大切です。
子どもが自主的に考え行動する力を育てるためには、親はサポート役に徹し、子どもの自主性を尊重することが求められます。
このようなアプローチにより、子どもは自分の目標に向かって成長していくことができます。
この子の実例からわかるのは、親の伴走が子どもの興味や将来の目標に合っているかどうかが、子どもの成績や学習意欲に大きな影響を与えるということです。
塾が提示している伴走が、必ずしも子どもの将来のビジョンと一致しているとは言えません。
ちまたにあふれる成功談が、子どもに合うとも言い切れません。
子どもの夢を応援すると言いながら、全く方向性の違う素地を伸ばしているのであれば、一体何のための伴走かわかりませんよね。
子どものための伴走は、いつも身近で見ている親にしかできません。
親だからこそ、子どものための伴走ができるのです。
伴走に疲れてしまっている方は、ぜひ伴走の意味や目的を見直してみて下さい。
冷静になってどんな素地を育てているのか考えてみれば、やるべきことが見えてくるはずです。
もしどうすればいいのかわからなくなってしまっているようでしたら、ファイへご連絡下さい。
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「小さい頃から勉強習慣はつけていて、うまくいっていると思っていたのですが、どんどん成績が落ちていってしまいました。頑張ってやっていたのに、成績が下がっていく一方で、子どももやる気を失い、可哀想になってきました。伴走の仕方がいけなかったのでしょうか。」