水の量を半分にしたら濃度は2倍になる?
サピックスの理科の問題を解いている時に、塾生が鋭い突っ込みをしていたのでご紹介。
子供がどう考えて間違えてしまうのかの一例です。
視点が違うから間違えてしまっただけで、考え方が間違えているわけではないのですね。
むしろ賢い方でしょう。
元の文章は実験の操作説明を含んでいて長いため、該当部分のみ抜粋します。
簡単に整理しましょう。
水溶液A(100㎤):水酸化ナトリウム(6.0g)入り
これを濃度2倍(水溶液C)にすると、どうなるかという問題。
サピックスの解答では
水溶液C(50㎤):水酸化ナトリウム(6.0g)入り
となっていました。
これをこの子はこう考えました。
「水100立方cmに水酸化ナトリウムを溶かした場合、水の重さは100g。そして水酸化ナトリウムが6.0gなので、濃度は
6÷106×100=5.66%
もしこの解答通りに50立方cmに水酸化ナトリウムが6.0g溶けているとしたら、水の重さが50gなので、
6÷56×100=10.71%
となるので、濃度2倍になっていないと思うのですが…もし濃度2倍にするのであれば、水は47g、つまり47㎤になりませんか?
この塾生の考え方を整理しましょう。
水溶液A(100㎤):水酸化ナトリウム(6.0g)入り
水溶液C(47㎤):水酸化ナトリウム(6.0g)入り
確かに水を47㎤(47g)にすれば、
6÷(47+6)×100=11.32%
となって、5.66の2倍の濃度になります。
果たしてどちらが間違っているのでしょうか?
実は濃度には3種類ある
実は理科で使われる濃度には3種類あるのです。
質量パーセント濃度
まず算数の食塩水でお馴染みの、水溶液全体の重さを基準とした濃度。
これを質量パーセント濃度といいます。
この子が濃度2倍にしたのもこの質量パーセント濃度です。
そしてあと二つ、体積モル濃度と質量モル濃度というものがあります。
モルというのは高校化学で出てくる単位ですね。
よって小中学生では基本的には目にすることがありません。
しかし原理は簡単なので説明しましょう。
体積モル濃度
まずモルという単位についてですが、これを詳しく説明してしまうと訳がわからなくなるため、単純に水酸化ナトリウムの粒の数と考えましょう。
すると体積モル濃度というのは、1リットルあたり何粒入っているか、という濃度になります。
この問題で言うならば、100㎤あたり6粒入っていたという濃度ということです。
これを濃度2倍にするという事は、同じ体積で比べることになるので、100㎤に12粒入れるということになります。
こう考えると、50立方cmあたりに直すと、6粒。
つまり50㎤に6.0g入っていることになりますね。
質量モル濃度
質量モル濃度というのは、1㎏に対して何粒入っているか、という濃度です。
先程のサピックスの例で言うと、100立方cmの水は100gなので、1㎏には60g。
つまり60粒の水酸化ナトリウムを入れていることになります。
この計算で考えると、濃度を倍にするということは、そのまま1㎏の水に120粒入れるということになりますので、50gの水には6粒。
つまり50㎤の水の中に、6.0gの水酸化ナトリウムが入っているという計算になります。
結論
問題文中に書かれてはいませんが、化学では基本的にモル濃度を用いるため、解説の解き方で問題ないのです。
そしてこの子が指摘した解き方も間違っているわけではありません。
濃度の求め方は1種類ではなかっただけですから。
しかし理科では質量パーセント濃度はあまり使わないため、受験という意味ではバツにされる可能性が高いでしょう。
受験を抜きにして考えたら、濃度の求め方に種類があるという盲点を突いた解き方を考えたので、こちらの方が賢い気がしますけどね(^^;
まぁ子どもの間違いはバカだからとは限らないという典型例です。
何で間違えたのか、そこを突き詰めると実は賢い間違え方をしているだけかもしれませんよ。
そしてその子供の考え方を否定し続けていると、考えることを放棄して、本当にバカになってしまいます。
本当にバカなのは、答えが1通り、解答が正しい思い込んでいるバカな大人たちの方なのに…
うちの子は型にはまらない考え方を持っている子だと思ったら、普通の塾では潰されてしまう可能性が高いでしょう。
そういう子はファイへお越し下さい。
解いているのに間違えだらけな子も同じ可能性が高いでしょう。
画一的な勉強の仕方で潰されてしまうのは勿体なくないですか?
水酸化ナトリウム6.0gが入った水酸化ナトリウム水溶液Aを100立方cmを作る。次に水酸化ナトリウム水溶液Aの2倍の濃さの水酸化ナトリウム水溶液Cを50立方cm作る。