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宿題が大量に出る本当の理由
結論から言ってしまうと大量に宿題を出しているのは保護者の自己満足に応えるためです。
塾側の事情としては、全員一律に同じ宿題を出して、一定の効果を上げられるからです。
本当に全員やっているかという質問に対する答えはノーです。
優秀な子ほど、ほとんどやっていません。
では優秀じゃない子がほとんどやらなかったら成績が伸びるのか。
それも違います。
やはり宿題の選び方、そしてやり方には重要なポイントがあります。
ここで親が正しく宿題を選ぶことができるようになるためには、このようになってしまった背景から知っておく必要があります。
塾が宿題を大量に出すようになった背景
宿題が増えていたきっかけ
1970年代に「ゆとり教育」という考え方が生まれ、1980年頃から2010年頃まで、本格的に学習内容削減が行われてきました。
現在中学受験を考えている保護者層はだいたいこのあたりの年齢層でしょう。
中でも2002年は大きな改革が行われゆとりのピークと言っても過言ではない教育となりました。
このあたりで保護者たちの間では公立校に対する不信感が広がり、受験勉強に対する加熱が起こりました。
そして共働きが増えていった時期でもありました。
そのため保護者は家に居ない間に勉強していないことに不安を覚え、宿題が多い塾へのニーズが高まりました。
この時期に宿題を出していなかった塾、もしくは少量の宿題しか出していなかった塾は、急激に宿題の量に対するクレームが増えてきました。
当然宿題が多い塾への流出も起き、宿題を出さない塾は淘汰されていきました。
そして塾は、家でやるのに充分な宿題の量を与えていることをアピールすることが増えてきました。
つまり、保護者に安心感を与えるために宿題の量が増えていったのです。
この考え方は今も健在で、塾や教材会社は保護者の満足度を上げられる宿題を日々研究しています。
この時期に流行った宿題は大きく二通りに分かれます。
一つは漢字や計算などの単純作業をこなさせる宿題。
もう一つが塾で解いたのと同じ類題を演習する宿題。
自分で考えてこなす宿題は当時まだネットが普及していなかった為ため、解決する手段が限られており、あまり受け入れられませんでした。
個別指導の台頭と宿題の増加
ゆとり教育の過熱とともに、個別指導のニーズも高まってきました。
個別指導の最大の売りは個人個人に合わせることができることです。
つまり宿題も個人に合わせて出すことができるということです。
保護者は大手の一律の宿題ではなく、宿題を個別に出してくれる塾に飛びつき始めました。
そのため、大手も対策を取らないわけにはいかず、大手でありながら個別指導のメリットを出せるように宿題も変わってきました。
それは、あらゆる範囲を宿題として出すことで誰にでも対応できるものにする、というやり方です。
習った単元だけでなく、それと関連する単元、以前やった単元、忘れてしまった単元。
復習をしたいと思った時にできるように、あらゆる単元が混ぜられて宿題にされるようになりました。
さらに大手集団塾では、子どもたちの宿題の状況を把握し、個別に宿題を出すように指示をしました。
しかし先生達にその余裕はありません。
次第に「頑張っても宿題をチェックされない」というクレームが増えていくことになります。
こうしてチェックだけでもするべきと言う風潮が生まれ、中身をろくに見ずにチェックだけする慣習が生まれていきました。
そして宿題の出し方も先生が指示しやすいようにレベル分けして基本、標準、応用と形式的に分類してきました。
塾の先生が言う「これはやらなくていいよ」の根拠になっているのは、
- 正答率が低い
- 受験レベルに見合わない
- 質問されても教えるのが面倒くさい
- あまりわからないところを宿題にするとクレームになる
- 教え切れてない
だいたいこのどれかであって、あなたの子ができるようにするべきかどうかは、考えられていません。
しかし保護者はそれに満足したため、この宿題の出し方は、現在も残ることになります。
少子化対策で増えた宿題
塾は生徒の奪い合いの問題とともに少子化対策にも力を入れなければなりませんでした。
特に集団塾の場合、生徒の減少は致命的です。
一クラスの人数が減れば、安く提供できなくなるからです。
そこで授業数を増やすことで売り上げを確保するようになりました。
そうすると塾の費用はどんどん上がってしまうのですが、幸いにもこれは受け入れられてきました。
その背景となったのが休日も働く親が増えたことです。
学校がない日に子供は家に一人で勉強するのかどうか。
そう考えると学校が休みの日に塾に行ってくれるのは親にとって安心感があったのです。
そのため、休みの日の補講や補修、対策講座が加速度的に増えてきました。
親が子どもだったころを思い出してもらえればわかると思いますが、以前はゴールデンウィークやお盆、年末年始に授業はなかったのです。
しかしどこかの大手がやり始めると、塾がない日に外部性としてそこへ通わせる親が出始めました。
そうすると生徒を奪われないためにもやらざるを得なくなります。
こうして祝祭日の授業がどんどん増えていき、当然のようにその授業の宿題も出されたため、宿題の量が急激に増えていきました。
SNSの普及で増加した宿題
さらにSNSが普及すると、宿題や教材にブームが生まれました。
- この教材は朝学習させやすい。
- 自分で進めやすい。
- 記憶に定着しやすい。
- 計算力が向上した。
- わかりやすかった。
今現在も、メルカリ等でほかの塾教材でも手に入れやすくなったことから、どんどん加熱しています。
しかしこれが増えていくと、塾も自分のところの宿題としてこのブームを取り込み始めるようになりました。
こうしてやり方が複雑な宿題が乱立して行きました。
これが今の現状です。
宿題の本当の対象者
宿題が増えていった背景を知ることでこの対応の宿題の要因が何であったかもうはっきりしたはずです。
一貫して「保護者の満足度を上げるため」以外何者でもないのです。
塾の教材は合格率を上げるために研究して改良されている。
そう考えている方もいらっしゃるでしょう。
実際それは嘘ではありません。
しかし合格率を上げる研究は誰のためでしょう?
現在でもチラシに合格者数が乱立している現状からみれば、誰を誘うための合格率なのか、一目瞭然でしょう。
30年前開成中学で出題された難問と言われた問題が、現在の中学受験生では基本問題として取り上げられています。
これは難関中で出た問題をどんどん指導に追加していったためです。
塾はあらゆる学校の問題をチェックし、ありとあらゆるパターンに応えられるように、どんどん教材に詰め込んでいきました。
一時期は「うちの教材と同じ問題が出た!」という宣伝が流行ったほどです。
「この塾の教材は当たる!」
そう考えた親は飛びつきました。
なのでどんなに綺麗事言っても、宿題や教材は親の満足度を上げるために作られているというところと、切り離すことができないのです。
これが理解できないと、本当に子どもの必要な宿題を見つけることはできません。
「塾の宿題は親の自己満足の為に出されている。私の子どものための宿題ではない。」
これをよく念頭において、次に進んで下さい。
塾の宿題は、9割捨てても大丈夫
塾の宿題が多くて回らない。
私のところにはしょっちゅうそのような相談が寄せられます。
それに対して私が行う対策は宿題の大部分を捨ててしまうことです。
誇張表現でもなんでもなく本当に9割捨ててしまっています。
場合によっては全て捨てさせることもあります。
しかしそれで困ることはほとんどありません。
むしろその後成績が急上昇して、塾の先生に「なんでこんなに伸びたのか分からない」と言われる子がほとんどです。
こんなにしてても大丈夫な理由は先ほど説明したとおりです。
塾の宿題はあなたのお子さんのために出されているものではないということです。
なのでお子さんに必要な部分だけを選び抜くと、結果的に9割捨てていることになる、ということです。
9割も捨てて大丈夫なので、鉛筆を転がして1/2の確率で捨てても全然問題ありません。
大切なのは何をやるかではなく、どうやるかです。
私なら適当に1/2の確率で選んだ物を使って、成績を上げる自信はあります。
それぐらい何を選ぶかはどうでもいい、ということです。
しかし私が選ぶときにあえて選ぶものはあります。
それは子どもが好きな問題です。
ファイの単元の選び方
私が問題を選ぶ基準は、子どもがその問題をやりたいかどうか、ただそれだけです。
「嫌いな問題やらなくてもいいの?大丈夫なの?」
これについては、ほかの記事でも再三書いているので、ここでは端折ります。
結論と簡単な説明だけします。
嫌いな問題、やりたくない問題は捨てておいて全然問題ありません。
やりたい問題を練習する中で、できるようにする方法を身につけると、嫌いな問題でも「できるかも!」と錯覚して、結果的に本当にできるようになってしまうからです。
そしてもう一つ。
子ども自身が「これをやりたい」ということに意味があります。
自分でやりたいと宣言して取り組むことで、自分からやれるようになっていくのです。
先ほど説明したように、どの問題をやるかは大して問題ではありません。
なので子どもに適当に選ばせても、何も問題ないのです。
選んだ問題をどうやらせるか
選んだ問題が基本なのか応用なのか、どのレベルの問題を選んだかによるので一概には言えません。
なのでケーススタディとして一例だけ紹介します。
数ある割合の問題の中で、「食塩水の問題をできるようにしたい」と選択する子は結構います。
その理由は、割合の問題の中でも、食塩水の問題は図式化しやすく、当てはめれば解けるところから、「これならできそう」と思いやすいからでしょう。
その場合、どうするか。
まず食塩水の問題以外、全て切り捨てます。
日々の計算や漢字も、やりたければやって構いませんが、やりたくないなら切り捨ててしまいます。
塾のカリキュラムが進んでも、気にしません。
「食塩水ができるようにする」と決めたらな、食塩水の問題と徹底的に向き合います。
そもそも一つに絞って理解できないのであれば、色々な問題に絞って手を出してもできるようになんてなりません。
なのでまずは自分で選んだ食塩水をできるようにしてもらいます。
そしてここからは子どもによって接し方が異なってくるところです。
実際には多数の対策があるので、このやり方をそのまま真似しようとはしないで下さい。
あくまで一例です。
この子の場合、食塩水の問題を、1問につき、少なくとも3通りのやり方で解けるように考えてもらいました。
3通りの内訳は、食塩ベース、水ベース、食塩水ベースで解く方法です。
実は食塩水の問題は、解きやすさに差はあるものの、何を基準にしても解けてしまいます。
なので、最初に思いついたどんな方法でも解けるということに気付けるように指導していきました。
結果、この子は「どうやったら解けるんだろう?」ではなく、「こうすれば解けるはず!」という自信を持つことに成功し、食塩水に関しては、難関中の問題まで一人で解けるようになってしまいました。
この子は、と書いていますが、同じような子は毎年数人いるので、例外ではなく、ファイでは普通にありうる話です。
そしてこのように一つ解決法を身に着けたことで、他の問題でもできるという自信につながっていきます。
「でもそれは食塩水の問題の話で、それ以外の問題では通用しないのでは?」
それは食塩水の問題の解き方を教えた場合です。
私は食塩水の問題の解き方を教えたわけではありません。
「解法は一つではなく、自分が思いついたやり方で押し通しても解ける」
ということを教えたのです。
この考え方は、他の問題でも使えます。
「基礎とは何か」で話していますが、解き方の軸さえ持っていれば、どんなやり方でも大抵の問題は解けるのです。
宿題の量に振り回されている方。
どう減らしたらいいのかわからない方。
はぜひご連絡下さい。
月1万円からアドバイスしています。
「なぜ塾ではこんなにたくさんの宿題が出されるのでしょうか。みんな本当にやっているんですか?」