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覚えると危険な公式
側面積を求める式は暗記しない方がいい
大手の塾では「覚えろ」と言われるこの公式。
円錐の側面積の求め方ですね。
確かにこの公式を覚えておけば側面積を即答できるため、圧倒的に有利なのですが、それは覚えていられる間の話。
もし忘れたり混乱したりすると、求められなくなってしまうのです。
そこで押さえておきたいのが、展開図のおうぎ形の弧の長さと底面の円周の長さが等しいということ。
「そんなの知ってるよ」
そういう子どもも多いのですが、知っているだけで理解できていない子が多いのです。
今回は円錐の展開図を初めて扱った塾生のオンライン指導の様子をちょっと紹介しましょう。
ぜひお子さんと一緒に試してみて下さい。
とりあえず作ってみる
まずは長さや角度は指定せず、円錐を作らせてみましょう。
どうですか?
作れましたか?
これは実際に塾生が作成した展開図です。
一見すると、ちゃんと円錐になりようですよね。
しかし実際に組みたてて見ればわかりますが、これをくっつけても円錐になりません。
公式を知っていて、円錐の問題を解くことができる子に展開図を作らせても、結構こういう展開図を作るのです。
公式だけ知っていても、実際に展開図は作れないんですね。
なぜなら、どうやったら弧と円周を同じ長さにできるのかわからないから。
そして、作れたとしてもまだ安心できません。
偶然一致するケースがあるため、まだ知っているだけの可能性があるのです。
とりあえずできていたとしても、1から順番に理解を確認していった方がいいでしょう。
まずはどうやって弧と円周を同じ長さにするのか。
公式を暗記しているだけの子は、実際に円錐を作らせると作れないことが多い!
公式を丸暗記しているだけの子は、難易度が上がると解けなくなる。
どうやって同じ長さにする?
実際に円錐を作ってみて、円錐の側面と底面が合わないことが分かれば、この長さと円周を同じ長さにすることに気付きます。
そして同じ長さにすることがわかったら、どうやったら同じ長さにできるかを考えることになります。
いくつは方法はありますね。
- 中心角の角度を測っておうぎ形を作る。
- 母線と半径の比を作りやすいおうぎ形の比に合わせる。
- おうぎ形を作ってからその大きさに底面を作る。
どれも正解です。
どう作ってもいいのですが、母線と半径の比に気付かせるのならば、おうぎ形を底面に合わせたいところ。
ということで、まずは底面の円をつくります。
次に側面にあたるおうぎ形を作るのですが、ここではおうぎ形にせずに底面の円より大きな円を作ります。
そして円の半径を一本切って、切れ込みが入った状態にします。
後はその切れ込み部分をずらして重ねていくと、側面部分ができます。
重ねる部分を増やすと底面が小さく、重ねる部分を減らすと底面が大きくなります。
これで底面に合わせてあげれば、円周が合う円錐をつくることができます。
こうすることで、おうぎ形の角度と底面の半径との間に関係があることが、感覚的に実感できます。
実際に塾生が作ったものがこちら。
これは、側面のおうぎ形の半径を8cm、底面の半径を4cmとして展開図を書いたものなので、側面が半円になっています。
展開図がわかっても作れない
なぜ母線×半径×3.14?
側面積の切れ込みを入れただけの最初の状態を考えると、中心角360°のおうぎ形と考えることができます。
これを側面とする円錐を強引に考えると、高さは0で、底面の円は同じ大きさの円錐になると考えられます。
このおうぎ形を重ねていって、360°重ねると底面は0になります。
もちろん理論上の話であり、実際には不可能ですが、規則性からイメージはできるはずです。
つまり底面の半径と、おうぎ形の中心角の間には、
側面のおうぎ形 | 底面 |
360° | 母線と同じ半径 |
180°(360°の半分) | 母線の半分の半径 |
90°(360°の4分の1) | 母線の4分の1の半径 |
0° | 半径0 |
このような関係があることがわかります。
これがわかれば、中心角の大きさは、側面と底面の半径の比と同じになることが実感として理解できます。
あとは式からでも押せますね。
中心角の角度は360°に対して「半径/母線」の割合になります。
よって側面を求める式は、
母線×母線×半径/母線×3.14
母線が約分で消えるため、母線×半径×3.14となります。
円錐の側面積の面積は、母線×半径×3.14
覚えているだけの子は、出し方を考えさせてみましょう!
展開図が作れるか試してみる
さて、では側面を半円にして、円錐を作ってみましょう。
先生…円錐にならない…
そう、おうぎ形なら円錐を作れても、半円になってしまうと作れなくなる子がいるんですね。
おうぎ形ならいかにもここで折る、みたいにおうぎ形の中心がありますが、半円になると中心がなくなります。
そのため、母線をくっつけるという発想がなくなってしまうのです。
こうなってしまうと、あの手この手で出来るまで頑張るしかありません(笑)
この子は15分かかりました(^^;
できた!
時間はかかりましたが、このように一度しっかりと理解できてしまえば、大抵の円錐の問題は解けるようになってしまいます。
この塾生もこの後、円錐の角度を求める問題や表面積の問題を解いてみましたが、しっかり応用問題まで解けるようになっていました。
公式は早いがリスクも大きい
確かに公式を知っていると早いのですが、公式は万能ではありません。
特に今まで見たことがない問題に直面した時は、どう公式を使うべきかわからなくなります。
そして算数で出てくる公式はこれだけではありませんし、数学になると公式は膨大になります。
中学受験で公式を覚えて挑むということは、中学生になっても覚えて挑んでいくことになりますので、どこかで限界を迎えると、それ以降、数学に太刀打ちできなくなるということを意味するのです。
つまり、公式を覚えるということは、大きなリスクを抱えながら勉強しているのと同じなのです。
そのため公式がなくても解けるようにしておき、その上で公式を使うのがおすすめです。
こうすることで、側面だけでなく他の解き方や難易度の高い応用問題にも対応できる力がついていくのです。
公式の丸暗記に限界を感じているなら、迷わずご相談下さい。
母線×底面の半径×3.14