注意事項
予め辛口宣言しておきます。
絶対の自信がある教育論をお持ちの方は読まないで下さい。
というより,読む必要がありません。
どっちの塾に通わせたい?
ではいきなりですが、質問です。
以下の2つの塾ならどちらにお子様を通わせたいですか?
・偏差値が10伸びる可能性はあるが,40%の確率で10下がる可能性がある塾
・最大でも2しか伸びないが,下がる事はない塾
この場合,大抵の方は2しか上がらなくても,下がらない方を選びます。
もう一つ聞いてみましょう。
・偏差値1下がるのと,1上がるのはどちらの方がインパクトが強いですか?
プロスペクト理論
これらは経済学ではプロスペクト理論と呼ばれるもので,心理学では損失回避の法則とも言われるものです。
実際に偏差値が1下がった子の親と話すと,
「このままでは合格出来ないんじゃないか」
「もっと勉強させないと」
「ちゃんと授業についていってるのか」
と言った不安を口にする方が多くいらっしゃいます。
ところがこの子たちが偏差値1上がって「良かったですね」と話をしても、
「まぁ1上がっても全然届くレベルじゃないですけどね」
「前回下がってるので」
「1なんて誤差の範囲でしょう」
こんなお話ばかりです。
冷静になって思い返してみると,成績が上がった時の反応が冷たいと思う方も多いのではないでしょうか。
このように人は,基本的には損失を嫌う,損失に対して過剰に反応する傾向が強く出るのです。
プロスペクト理論は後天的に身に着ける
ところがこのプロスペクト理論は経験から後天的に身につけるものなので,そもそも損失にあたる経験していない子どもには理解できません。
生活の中での様々な経験を通して「損はいけないことなんだ」「損したくない」ということを学んでいくのです。
そのため物事の損得をまだ知らない子どもたちは10点上がることと10点下がる事は同列と考えて一喜一憂するのに対し、親は憂しか示さないため,
「どうせ上がっても褒めてくれない」
という気持ちのズレが生まれるのです。
なぜ子どもはダメな道へ進もうとするのか
さて,ここで話を終わらせると「少しでも上がったら褒めてあげて下さいね」という話して終わってしまうのですが,もうちょっと踏み込んだお話をしましょう。
それが,子どもはプロスペクト理論通りには動かない,ということです。
先程も話した通り,プロスペクト理論は経験的に学んでいくものです。
だから親がいくらリスクを回避しようと先回りしても,子どもは予想もつかないような方法でリスクを取って失敗をする。
本当に大切なのはここです。
リスクをどう学ばせるのか
失敗から何を学ばせるか。
つまり,リスクを取ったことを叱るのか,
リスクを取ったことを褒めるのか。
リスクといっても様々なリスクがあります。
リスクというとやまかけがイメージしやすいと思いまが,他にも携帯で遊んでしまうリスク,テレビを見てしまうリスク,家で勉強しないリスク,考えようによっては勉強することそのものもリスクになり得ます。
大抵の場合,親がこのリスクから生まれる結果を先回りして「もっと勉強しなさい」とか「そんなんじゃ成績上がらない」などと言ってしまいます。
しかしそれでは子どもはリスクだということを学べないのです。
損をしたと思うから損をしないように動こうとするようになるのです。
その「損をした」と感じる時間を親が奪ってしまっていることが多い。
だから子どもはいつまで経っても損に気付けない。
何度繰り返しても「やろうと思ってたのに言われたからやる気がなくなった!」などと言われるのです。
失敗から学べるようにしてあげるのが本当の子育て
子どもは親が先回りしても聞いてくれません。
自分が失敗しないと学べないのです。
そのため,成績が下がった時には現状を叱るよりも,「損してるんだ!」と気付かせる事が重要になります。
損だと思えるようになってくれば勉強しますから。
自分なりにですけどね。
親がいないところで「今のうちに遊んでおかないと!」みたいに考えている子はめちゃくちゃ時間がかかります。
何せ「遊ぶ時間を損したくない!」ということが根底にありますから。
しかし本当に損なこととは何かを学ばせることで,時間はかかっても本当に大切なことは何か気付けるようにはなります。
リスクを取って失敗したら?
次にリスクを取って失敗したケース。
習い事を優先したとか,直前までやってなかったとか,そういう細かい事情は無視して,勉強したけど点に結びつかない子。
これらは解釈次第ですが,いいリスクを取れたと解釈できる子は,たとえ失敗してもリスクを取ったことを褒めてあげる方がいいでしょう。
なぜならリスクは大人になるにしたがって取れなくなるからです。
これは説明するまでもなく大人の皆さまならご存知でしょう。
従ってリスクを取れるうちは取らせておき,様々なリスクの取り方と結果を学ばせる方が,将来本質的に役に立つスキルになるのです。
リスクを取ったことを褒める
例えば山かけ自体は基本的には勧めませんが,絞って勉強が出来たこと自体は褒めるに値します。
習い事や部活で他の人よりも勉強時間自体が少なくなっているのにも関わらず諦めずに努力している子も褒めるに値します。
思いつきで突然単語帳を作り出して,結局時間がなくなった。
これもやってみて初めて時間がかかるし非効率だとわかるもの。
現状を打破しようと行動したこと自体は評価に値します。
結果は出なくとも,頑張った期間は短くとも,努力出来た子は,下がってしまう事がわかっていても諦めずに頑張ったこととして褒める事ができます。
どんな形であれ,努力を認める
要するに何でもいいんです。
このままだと何も変わらなかった。
それを変えるために努力した。
その努力が必ずしも正しいとは限らない。
だけどやってみようとしてみた。
これがリスクを恐れずやってみるようになる原動力に繋がります。
そしていいリスクの取り方,悪いリスクの取り方がわかってきます。
そもそも親が本当のリスクをわかっていない
最後に親として絶対にやって頂きたくないこと。
それは「ムダだった」と感じさせることです。
ムダを感じる程,無気力になり,リスクを取る取らない以前の問題になります。
基本的にはこのリスク管理に重点をおいた指導法は一般的に考え得る状況であれば,大抵の状況で使えます。
地味ですし時間もかかりますが,諦めなければ大外れはしません。
ただ問題なのは,親や指導者が本当の意味での損失を理解していない。
・今ここで小言を言って反発を買うリスク。
・文武両道を夢見て習い事をさせながら成績向上を求めるリスク。
・ここで成績が上がってしまったことによるリスク。
・試験直前に勉強をやり出すリスク。
・勉強をやり続けることによるリスク。
・成績向上だけを追い求めるリスク。
・認めてあげられないことによるリスク。
おそらく何を言っているのかわからないリスクもあるのではないでしょうか。
子どもが目先の楽しさに時間を奪われて成績を上げられないように,親も目先の損失を怖がって将来に大きな損失を与えていることに気付いてない。
「今何をすべきかわかっていない」と怒る親。
しかしその親こそ目先の成績や偏差値にとらわれて,今何をすべきかわかっていない。
親や教育者が,何が本当の損失かわかっていないことにこそ問題があるのです。
本当のリスクとは何か
大人はリスクを取れなくなっていても,子どもはリスクを取ってしまう。
でもだからこそリスクを持って挑んだことが成功した時に大きく伸びる可能性がある。
どんなに親が外堀を埋めたって,下がる時は下がる。
下がることがない塾なんて存在しないのです。
なら,子ども自身がリスクを正しく理解し,うまく付き合えるようになる方が将来役に立つと思いませんか?
それが偏差値10伸びる可能性がある塾で,10伸びる側の子どもにする秘訣です。
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