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過去問は大した指示が出ない
一般的に大手の塾では指示を出しても、その運用については担当に任されていることも多く、統一されていないことが多いでしょう。
SAPIXもそんな塾の一つです。
志望校が違えば過去問も違いますので、一律に指導するのが難しいのが一番の理由です。
オンライン授業でも、志望校どころか都道府県までバラバラなので、一律には行っていません。
とはいえ、指示がなくても、何となく自分なりに始めている子は少なくないでしょう。
そして過去問の点数を見て右往左往している頃だと思います。
過去問で点を取れるようにするためには何をすればいいのでしょうか?
そもそもなぜこの時期過去問をやらなければいけないのでしょうか?
大手塾では言えないような裏話も交えてお話します。
過去問の開始時期
「過去問はいつから開始すればいいのでしょうか。あまり早いとできない問題が多いと思うのですが…」
市進学院 中3 母
確かにあまり早いと未習分野もあるため、点数が取れないでしょう。
しかし、一般的に、中学受験であれば夏までで必要なことは終わっています。
高校受験でも、進学塾は終わっていることが多いでしょう。
終わっていないとしても、残すところはそう多くはないはずです。
実はオンライン授業では、夏休みから過去問をやりまくっています。
例え単元が終わり切っていなかったとしても。
しかしながら、この時点では特定の学校に絞込みはしません。
色々な学校の過去問を実施してみて、相性を探(さぐ)るのが目的です。
そのため、場合によっては学校名は伏せて行います。
あまり時期が早いと、「どうせ受けないし」と言って、緊張感が生まれません。
なお、高校受験ではまだ習っていない所がいくつかあると思われます。
そのため、この習っていないところは無視。
飛ばして実施しません。
ターゲットを絞った、志望校の過去問を実施するのは夏休みが終わった後からです。
ちょうど学校別の過去問も出始めますよね?
これが出たら購入してスタートです。
過去問の実施年度の順序
色々な戦略を持った先生がいるので、他の先生のやり方を否定するつもりは全くありませんが、過去問は第一志望、新しいものからをオススメしています。
「なるべく最後までとっておいて、いい点数を取ってから入試に挑んだ方が、安心できる気がするんですけど…」
という気持ちはわかりますが、第一志望校の一番新しいものを迷わずやってしまいましょう!
なぜなら初めてやるものは印象に残りやすいからです。
そのため、初めにやってしまった方が、どういう出題の出し方をするのか、どんな問題が出たのかといった第一志望の傾向に関する印象がつきやすくなります。
多くの先生が、
「今の時期やっても点が取れないので、もう少し近くなったらにやりましょう」
とか、
「一番新しい年度は取っておきましょう。」
という話をしますが、傾向が変わっていることに気が付かないリスクを考えると、これはかなり危険です。
近くなってからやっても出来てない事を確認するだけになりかねません。
子どもも今の時点で不合格と判定されるのを恐れるあまり、避けようとする傾向にありますが、それを避けるような心構えでは、どのみち合格はできません。
合格から遠いのであれば、他の人よりも早く傾向と対策を練って、志望校への対策の時間をより多くすることが必要なはずです。
避けていたら本末転倒ですよね?
実際、早めにやっておくと、その学校の出題の仕方が印象に残りやすいため、その後の勉強で志望校の出題を意識した勉強がしやすくなります。
これは大きな差を生みますよ。
① 一番最初にやったものは印象に残りやすい。
② 昨年から出題方針が変わってしまっているかもしれない。
③ 早いうちから理想と現実のギャップを見つめる事により、対策を練る時間を多く取れる。
最新の年度から実施するデメリット
最新の年度から実施するのには、デメリットもついて回ります。
よって、そのデメリットを知った上で、使っていかないと、メンタルがやられてしまうこともあります。
その3つの要因を話しておきましょう。
- ショックを受けやすい。
- 入試直前の確認に使えない。
- 未習で出来ないところがある。
ショックを受けやすい
まず、一つ目がショックを受けやすいということ。
これが最新の年度を避ける最大の理由だと言っても過言ではありません。
合格者最低点などの情報も出ていますからね。
如実に不合格を思い知らされることになるのです。
しかしながら、過去問など所詮問題集の1つにすぎないのです。
同じ問題が出るとは限りません。
ならば問題集として有効活用するのが一番です。
もう一度思い出して下さい。
何のために過去問を実施するのですか?
それがわかっているのなら、最新年度から実施する方が合理的だとわかるはずです。
点数は気にせず、実施していって下さい。
入試直前の確認に使えなくなる
入試直前の確認に使う先生もかなり多いのですが、もし入試直前にやって点数が足りなかったらどうしますか?
現実を見るという意味では緊張感を高められますが、遅すぎです。
こうなると志望校を下げるための材料としか活用されません。
「あ~合格点取れなかったですか~。ではちょっと厳しいかもしれませんね~。志望校考え直しましょうか。」
このように塾の先生が、志望校を下げる指導をしやすくなるだけなのです。
受験するのは先生ではありません。
塾に貢献してあげる必要もありません。
プロなら、9月に第一志望を実施してしまっても、2月までの伸びは先読みできます。
だからやってしまっても全然問題ないのです。
未習で出来ないところがある。
9月にやって出来ないところが多いのは当たり前です。
それが2月までに解けるようになっているのは当たり前のことです。
しかし入試直前まで取っておいても、解けないことの確認にしかならない事が多いのです。
別に全部解ける必要などないのです。
習ってないところも解けなくて良いのです。
そんなことよりも、習ったところはちゃんと取れますか?
むしろこちらの方が重要!
これをしっかりチェックしましょう。
もし合否が気になるのならば、習っていない問題を除いて、正答率が何%かを計算し、合格点に当てはめればいいだけです。
塾が過去問の点数を収集する理由
過去問の点数を塾へ申告することになっている人も少なくないでしょう。
これは合格しそうかどうか調べるため、と思っている人が多いのですが、実はそうとも限りません。
あまり明かされない、過去問の点数の収集理由をお話しておきましょう。
定点観測のため
塾によっては毎年同じくらいの時期に実施してもらい、点数をストックすることで、この時期に何点くらい取る子の合否をデータとして収集していることがあります。
大手の塾はほとんどやっています。
データ量が豊富ですからね。
そしてそれらのデータを基に、受験校の指導をすることもあります。
つまり、今後合格する可能性があるかないか。
このデータを収集している塾の場合、不合格が見えているのに指導するメリットはほぼありません。
それなら少しでも可能性がありそうな子を指導する方が実績を稼げますからね。
よって、こういうタイプの塾に通っていて、先生から難しいという話が出たら、そのままその塾で粘ってもカモにされる可能性が高いと言えるでしょう。
期待を持たせるため
過去問実施は基本的に家で行うことになるはずです。
そのため、忙しいご家庭程、子どもに任せて実施することになります。
すると、子どもはズルすることが多いんですね。
先生もそれをわかっています。
しかし、親は期待が大きいとそれを信じてしまうのです。
すると、合格できるかもという期待で、塾をやめさせるということを考えなくなるため、先生にとって都合がいい、というわけです。
これ、実は結構あるあるなのです。
塾としても、稼ぎ時の受験シーズン真っ只中に顧客を失うわけにはいきませんからね。
よって、過去問の実施は、親の監督の元、解答を取り上げて行うのがいいでしょう。
勉強時間の確保のため
勉強はさせたい。
でも個別に管理をして指示出すのは負担が大きい。
それが現実のため、とりあえずチェックしておくなら過去問の点数を把握しておくのが一番楽なのです。
過去問なら個別指導してるっぽい感じが出せますし、やらせておくだけで勉強したことになります。
とりあえず過去問を実施してあれば、最低でも試験時間に相当する時間ぐらいは机に座らせることができますからね。
実際、勉強時間を確保できないなら過去問でもやっておいた方がいいともいえます。
しかし、勉強の密度が高い子なら、過去問の実施で時間を稼ぐのはもったいないですね。
直しやまとめに力を入れるなら効果はありますが。
なので、塾の規模や指導方針にもよりますが、勉強時間確保のための過去問なら、実施の意味について考えた方がいいでしょう。
点が取れなかったら泣け!!!
これも多くの塾講師が
「まだ習ってない問題があるので仕方ないですよ。」
となぐさめの言葉を与えますが、重視するべきなのは点を取るべきところで点を取れているか、です。
習っていなくて点が取れていないのなんて最初から気にしてません。
そうではなく、取れなければいけない習っている問題で、点を落としてしまっているところをしっかり見るべきなのです。
この時点で取れるべきところでちゃんと点を取っていたとして、それが合格点に届いていれば、合格できる可能性は高くなります。
そのため、過去問の点数を見て「あ~まだ全然届いてないや」とドライに見てしまうのはあまりよくありません。
たとえ早い時期からでも、悔しがれる子の方が、合格しやすくなります。
実力では何点取れるのかを調べる
意外とやっていないのがこれ。
実力通りなら何点取れたかは調べておいた方がいいでしょう。
もしミスがなければこれだけ点が取れたはず!
というのは自分の自信にもなります。
また、悔しさが生まれれば、次への原動力にもなります。
自分のミスに直視するためにも、しっかり解きなおしをしましょう。
合格点+20点を狙え!
「合格点にも届いていないのに、+20点だなんて狙えないですよ…」
という声が聞こえてきそうですが、諦めは伸びも小さくします。
第一、本番で普段どおりの力が発揮できる子なんてほぼいないのです。
本番でも普段どおりできる子は
- 超天才
- マイペース
- 自信過剰
の3パターンぐらいです。
これ以外の人は少なからず緊張で点が下がります。
それで落ちてしまっては泣くに泣けません。
だから+20ぐらいは目指すようにしましょう。
過去問で不合格を決めるな!
過去問は所詮問題集の一つです。
これで合否が決まる訳ではありません。
合格の可能性を少しでも上げるためにやっておくものです。
この結果で
「あぁ、もう無理だぁー!!!」
などと悲観的になる必要はないのです。
今点が取れなくても、入試本番までにこの出題形式に慣れておけばいいのです。
諦めずに常に過去問の出題傾向を意識して勉強していきましょう。
過去問を解く回数
「過去問を3回は繰り返せ、と言われていますが、そこまでやる意味はあるのでしょうか。」
早稲田アカデミー 小6 母
早稲田アカデミーは過去問至上主義な塾ですからね。
しかし早稲田アカデミーではなくても、繰り返しの指示をする塾はあります。
過去問はその学校がどういう子が欲しいと言っているかを如実に表します。
そのため、過去問を知らずに受験するのは、対策をしてきた子よりも1教科につき10点もの差が生まれるとも言われています。
よって過去問で傾向をつかんでおくだけでも十分価値があります。
ではやり込むことに意味があるのか。
同じ問題はどうせでないのに。
確かに同じ問題は出ませんので、繰り返す過去問で点数を取ること自体には意味がありません。
しかし傾向を頭に刷り込むという意味では十分効果があります。
また、点数よりも、2回目でどれだけ点数が伸びたのかが入試に大きく影響してきます。
点数が全く足りていないにもかかわらず、2回目実施でも点が大して上がらない。
こういう子はそのまま繰り返してもまず合格できません。
1回目の直しでどれだけ点数を上げることができるかが大切なのです。
直しの精度が高い子は、過去問で点が取れなくても、合格する可能性は十分出てきます。
そういう子がやっている過去問ノートのつくり方のポイントを紹介しておきましょう。
過去問ノートに分析しておくべきこと!
実績をガンガン出す先生は、大抵同じことを意識させています。
- 出来なかった問題とその原因。
- ケアレスミスで何点落としたのか。
- ケアレスミスがなければ何点だったのか。
- ケアレスミスの原因はなんだったのか。
- 解けなければいけない問題はどれだったのか。
- 捨て問はどれか。
- 合格点と自分の実力との差は何点ぐらいか。
- 今後対策をして強化すべき分野は何か。
- 今回出来なかった分野の対策方法は何か。
- 入試本番でこの問題を解くとしたらどういう戦略を立てて解くか。
この10ヶ条は大きな武器になります。
これをしっかりとやれる子は、偏差値や合否判定に関わらず、合格しやすくなります。
なお、オンライン授業では、受験対策の指導もしてはいますが、そもそも合格のための勉強はしない塾です。
それでも偏差値が10足りなくても合格してしまう子が出てきます。
そのため、一応オンライン授業での指導についてお話しましょう。
オンライン授業での合格度外視の勉強法
オンライン授業では、過去問よりも重視してみているものがあります。
それが、第一志望の学校の教育法。
志望校を偏差値で選ぶという方も少なくないですが、そもそもその偏差値の差は指導方針の差や、教育方針の差から生まれたものです。
そのため、ファイでは進学したい学校が、どのような指導をして、どう授業を進めていくのか、を見ることにしています。
すると、中学校に入った時に、どういう勉強をする子が伸びやすいのかがわかるのです。
だからオンライン授業の卒業生は偏差値が10足りなくても合格しますし、ギリギリで合格しても上位に食い込んでいく子が多いんですね。
なお、このやり方は即効性がありません。
受験直前でやるとなっても、そもそもの勉強スタイルが整っていないことが多く、うまくいかないのです。
そのため、中学進学後を見据えて、長期の指導をお考えでしたらお力になれるやり方になります。
もし今のままだと中学進学後もマズいと感じる方は、ご連絡下さい。
勉強法の指導は、受験が終わった後では効果が薄いのです。
ずーっと受験のための勉強をやらせてきた後ですからね。
受験の真っただ中にいるうちに、受験のための勉強ではない、という方針をハッキリさせて勉強させるから、効果が高いのです。
そのため、決断するチャンスは受験後ではありません。
合格を狙うか、受験後を狙うか、受験前の決断が大切になるのです。
「そろそろ過去問をやる時期だとは思いますが、塾からは具体的な指示は出ず、『やっておけよ』で止まっているため、困っています。一応みなさんの見様見真似で行ってはいるものの、点数は取れず、本人も『こんなのまだ解けるわけない』といって拗ねてしまい、それ以降手をつけようとしません。どのように取り組むのがいいのでしょうか。」
SAPIX 小6 母